建築に求められる性能として,その中で生活する人々の活動を活性化する機能性と,周囲の環境と調和する美観,そして人々の生命や財産を地震などの災害から保護する安全性の3つが挙げられる。建築構造は,これら性能のうちで安全性と特に深く関わる。建物に要求される安全性を確保しつつ,機能および美観をも満足するよう構造を計画することが肝要であり,すなわち構造設計の趣旨である。本講義では,建物の安全性を合理的に保証するための構造計画を検証していく。建物の安全性の検討には以下の3段階がある。
1) 材料(鋼材,コンクリートなど)レベルの安全性
2) 部材(柱,はりなど)レベルの安全性
3) 建物全体系レベルの安全性
各レベルに対して既に種々の調査・実験・解析の手法が開発され運用されている。社会的要望および受講生の希望に応じていずれかのトピックに焦点を絞り,既往の手法を把握・評価し,問題点を抽出した上で改善点を検討する。