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認知工学入門

Cognitive System

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授業の概要

工学の価値は、人間、社会環境、自然環境との関係において決定されるといっても過言ではない。この講義は、人間と工学の所産であるモノ(道具)との関係に焦点を当てたものである。あなたは、どのように操作したらいいのか、なぜそのように操作しなければいけないのかなど、理解しにくく使いにくいモノに遭遇したことがあるだろう。理解しにくく使いにくいのは、あなたに原因があるのだろうか。その原因の多くは、ユーザがどのように外界からの情報を処理し、行動するのかについて確かな知識に基づきモノがデザインされていないことにあるかもしれない。講義では、人間の認知の仕組みを解説し、そのような仕組みに即したモノのデザイン、すなわち、ユーザ中心のデザインにおける原則を学ぶ。加えて、関連したトピックスを毎回の授業時に紹介する予定である。

達成目標

1.モノづくりには人間の理解、特に、心の仕組みの理解が欠かせないことを確認する(授業計画全てにわたっての目標)。
2.モノづくりという視点から人間の心の仕組みについて理解する(主に授業計画2から6にて達成する)。
3.確かな知識に基づき、ユーザ中心のモノのデザイン原則を確認し、実例を通して応用力を身につける(主に授業計画7から14にて達成する)。

授業計画

1.認知工学とは
  ・モノづくりとモノづかい
  ・応用認知科学としての認知工学
2.視覚情報処理
  ・視覚受容器の仕組み
  ・対象認識
  ・生態学的視覚
3.音声情報処理
  ・聴覚受容器の仕組み
  ・音声認識
4.知識と記憶
  ・知識の内容と構造
  ・記憶の仕組み
5.思考
  ・概念学習と識別
  ・演繹、帰納、ヒューリスティック、アナロジー
  ・問題空間
  ・ACT*とSOAR
6.言語とコミュニケーション
  ・言語理解と言語生成
  ・言語学習
  ・テキスト理解
7.理解しやすさと使いやすさのためのデザインの原則
  ・誰のためのデザイン?
  ・“The psychology of everyday things”のインパクト
  ・「記憶と注意」の研究者D.A.ノーマン
8.行為の7段階理論
  ・人間の思考と説明の性質−誤った原因帰属「何のせい?」
  ・人間はどのように作業するのか
  ・実行と評価における障壁
9.道具使用における知識のありか
  ・頭の中にある知識と外界にある知識
  ・知識のトレードオフ
  ・デザインの中の知識
10.アフォーダンスと制約
  ・道具のアフォーダンスと制約
  ・可視性とフィードバック
11.ヒューマン・エラー
  ・スリップとミステーク
  ・注意とエラー
  ・エラーに備えたデザイン
12.デザイナーを取り巻く問題
  ・デザインの自然な進化
  ・デザインのプロセス
  ・機能追加主義と誤ったかっこよさ
  ・コンピュータを使いにくくしているデザイン
13.ユーザ中心のデザイン
  ・難しい作業を単純なものとする7つの原則
  ・デザインと社会
14.エモーショナル・デザイン
  ・魅力的なモノは使いやすいか
  ・エモーションとデザイン
  ・いくつかの実例照会
15.まとめ

評価方法と基準

講義の流れの中で適宜3回のショートテストを実施し、与えられたテーマについて調べて自ら意見を述べる2回のレポート課題を提示する予定である。それらの評価と期末試験のテストで評価する。

教科書・参考書

教科書
「誰のためのデザイン?−認知科学者のデザイン言論−」(著者 .D.A.ノーマン、訳者 野島久雄;新曜社)と授業時に配布される資料を教科書とする」。

参考書
認知工学の提唱者D.A.ノーマンの翻訳されている著作
?「エモーショナル・デザイン?微笑を誘うモノたちのために−」(著者 .D.A.ノーマン、訳者 岡本明 他;新曜社) ?「人を賢くする道具?ソフト・テクノロジーの心理学−」((著者 .D.A.ノーマン、訳者 (著者 .D.A.ノーマン、訳者 佐伯胖 他;新曜社) ?「パソコンを隠せ、アナログ発想でいこう!?複雑さに別れを告げ、“情報アプライアンス”へ−」(著者 .D.A.ノーマン、訳者 岡本明 他;新曜社) ?「テクノロジー・ウォッチング−ハイテク社会をフィールドワークする−」(著者 .D.A.ノーマン、訳者 岡本明 他;新曜社)
認知心理学や認知科学に関する著作例
?「「使いやすさ」の認知科学?人とモノとの相互作用を考える 認知科学の探究−」(著者 原田悦子、共立出版)
?「情報処理心理学入門 1、2、3」(著者 P.H.リンゼイとD.A.ノーマン、訳者 中溝幸雄、サイエンス社)
?「人間の情報処理?新しい認知心理学へのいざない−」(著者 D.ルーメルハート、訳者 御領謙、サイエンス社)

履修前の準備

工学にとっては基礎的領域であり、特段の準備を必要としないが、人間・社会と工学の関係について技術者を志向するものとしての興味を抱いていること。

学習・教育目標との対応(機械工学科)

1.(B)機械工学を応用領域の技術と関連づけて学習することで,近年要求される学際的な研究に対して積極的に取り組むことができる.

学習・教育目標との対応(機械工学第二学科)

1.(D)技術・工学の根幹をなす「物質」,「エネルギー」および「情報」を基盤とした機械工学の基礎的な知識と応用能力を習得する (1) 力学,材料力学,熱力学,流れの力学の基礎 (2) 多く (17科目以上) の専門科目の習得

学習・教育目標との対応(応用化学科)

1.(A)応用化学をささえる工学一般・自然科学・情報技術に関する知識と,その応用能力.

学習・教育目標との対応(電気工学科)

1.A1:種々の文化および社会の発展の歴史を理解して、説明することができる。

オフィスアワー

大宮校舎で開講される講義であることから、2年生までの学生との直接的コンタクトは、講義日に限定される。ただし、e-mailをとおして質問や意見が伝えられるように環境づくりをしようと考えている。

環境との関連

環境関連科目 (環境教育割合25%)

最終更新 : Thu Sep 20 07:42:10 JST 2012