確率論は17世紀のカード遊びに端を発し,統計学は社会調査から生物学,品質管理,現在では確率論とシミュレーションを組合わせたデリバティブ理論が金融経済で用いられ,応用と密着して発展してきた特徴があり,因果法則に従う事象を扱う他の数学分野と趣きを異にしている.確率論は場合の数を数えることから出発し,ある事象が起こる確率をもとにして確率変数を定義し,その変数がどのような値をとるかという確率分布とその性質を調べる。一方,統計学では多くの個体を含む集団からいくつかを標本として取り出し,その標本をから集団の分布に関する性質を推論し,確率論の知識を用いる.本講義では集合,順列など基礎的な知識の復習から始め,確率の定義と基本法則,確率変数と確率分布などの確率論の基礎を学ぶ.そして確率論の知識をもとに母集団分布と標本分布を研究し,推定と検定に触れる.