代数学は演算に関する構造を扱うための数学理論であるが, 単なる理論に留まらず, 様々な工学技術に応用されている. 特に, 近年発達してきた暗号理論・符号理論を理解するには, 有限体を中心とした代数学基礎の理解が必要である. 本科目では, 代数入門として群論・環論の基礎から始めて有限体論までを講義し, 残りの時間で符号理論の入門的内容を講義する予定である. これにより, 代数学の基本を理解し, また情報通信分野への応用の端緒に触れられるようにする.
講義内容は概ね以下の通りとするが, 受講生の理解度に応じていくつか取捨選択することもある.
1 有理整数環, 有理数体と実数体
2 群, 正規部分群と剰余群
3 準同型定理, 巡回群
4 環, イデアル
5 環準同型定理, 素イデアル, 局所化
6 単項イデアル環と一意分解環, ユークリッド聖域
7 ユークリッドの互除法と整数の整除, 合同式
8 既約剰余類群とフェルマーの小定理, オイラー関数とオイラーの定理
9 多項式環, 既約多項式, 原始多項式
10 体の拡大, 代数拡大, 最小分解体
11 有限体, 有限体の存在, 有限体の構造
12 線形符号
13 ハミング距離, ハミング符号
14 巡回符号, 巡回ハミング符号の復号法
15 期末試験
工学基礎 代数系とその応用, 平林隆一, 数理工学社, 2006.