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技術者の倫理

Engineering Ethics(introductory lesson)

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授業の概要

今日、科学技術は、空気や水と同様、人間が生きていくのになくてはならないものである。人間生活は、科学技術のもたらす利益と危害に支配されている、と言っても過言ではない。したがって、科学技術を人間生活へと応用する技術者の責任はきわめて重い。技術者倫理とは、単に、技術者自身が社会に出て失敗しないための保身の心得というわけではない。技術を用いることにより、一方で豊かな社会を創造して人類の幸福に貢献し、他方で公衆や環境への危害を最小限にくいとめるために、専門家としての一人の技術者に何をすることができるのか。法律以前の「人の道」について理性的に考えることこそが、技術者倫理の本当の目的である。

達成目標

1.多様な価値観を許容し、物事を多角的に認識するモラル創造力を養うこと。
2.個別的状況の根底にある倫理的葛藤の本質を洞察する能力を養うこと。
3.原則に依拠しつつ、状況に応じた的確な倫理的判断力を養うこと。

授業計画


【授業計画】【授業時間外課題(予習および復習を含む)】
1.第1章 組織の中の技術者
 スペースシャトル・チャレンジャー号事故を事例として取り上げ、組織における技術者のあり方、現代技術の特質と技術的判断の困難さ、事故の社会的要因について考える。
「第1章 組織の中の技術者」(教科書1ページから12ページ)
2.第2章 技術者のアイデンティティ
 技術業が専門職と言えるための条件について考える。
「第2章 技術者のアイデンティティ」(教科書13ページから25ページ)
3.第3章 説明責任
 三菱自動車ハブ欠陥事件を事例として取り上げ、社会を対象とする実験としての技術、人間の尊重、インフォームド・コンセント、コンセンサス会議について考える。
「第3章 説明責任」(教科書26ページから37ページ)
4.第4章 製造物責任
 カネミ油症事件を事例として取り上げ、不法行為法と製造物責任法の共通点と相違点、製造者の社会的責任、製造物責任法の免責条項について考える。
「第4章 製造物責任」(教科書38ページから46ページ)
5.中間テスト(1)第1回から第4回までの授業内容に関する試験
第5章 リスクとヒューマンエラー1
 リスクとは何か、ヒューマンエラーにどう対処すべきかについて考える。
「第5章 リスクとヒューマンエラー」(教科書47ページから59ページ)
6.中間テスト(1)の解説
第5章 リスクとヒューマンエラー2
 JCO臨界事故を事例として取り上げ、重大事故が起きた経緯とヒューマンエラーの対策について考える。
「第5章 リスクとヒューマンエラー」」(教科書47ページから59ページ)
7.第6章 費用-便益分析
 フォード社ピント事件を事例として取り上げ、費用-便益分析、結果主義的な考え方、人間尊重の考え方、許容可能なリスクについて考える。
「第6章 費用-便益分析」(教科書60ページから69ページ)
8.第7章 内部告発
 東京電力データ改ざん事件を事例として取り上げ、内部告発とは何か、守秘義務、内部告発の許容条件、内部告発者の保護について考える。
「第7章 内部告発」(教科書70ページから81ページ)
9.第8章 知的財産権
 青色発光ダイオード職務発明事件を事例として取り上げ、知的財産、特許権、特許対象となる発明の条件、特許制度の問題点、職務発明について考える。
「第8章 知的財産権」(教科書82ページから92ページ)
10.中間テスト(2)第5回から第9回までの授業内容に関する試験
第9章 技術者の国際的相互承認1
 技術士制度、APECエンジニア、JABEEについて考える。
「第9章 技術者の国際的相互承認」(教科書93ページから100ページ)
11.中間テスト(2)の解説
第9章 技術者の国際的相互承認2
 技術士制度、APECエンジニア、JABEEについて考える。
「第9章 技術者の国際的相互承認」(教科書93ページから100ページ)
12.第10章 グローバル化と価値観の多様性
 インドネシア味の素による豚酵素事件、ボパール化学工場の有毒ガス漏れ事故を事例として取り上げ、価値観の閉鎖性、グローバル化の問題点、技術の政治性について考える。
「第10章 グローバル化と価値観の多様性」(教科書101ページから111ページ)
13.第11章 予防原則
 水俣病、遺伝子組み換え作物、アメリカ対ヨーロッパのホルモン牛肉紛争を事例として取り上げ、予防原則の利点と問題点について考える。
「第11章 予防原則」(教科書112ページから128ページ)
14.第12章 技術者と環境
 ギルベイン・ゴールドを事例として取り上げ、技術者が考慮すべき環境倫理について考える。
「第12章 技術者と環境」(教科書129ページから139ページ)
15.期末テスト 第10回から第14回までの授業内容に関する試験及び解説
自律的な技術者となるために
「はじめに」(教科書冒頭)「おわりに」(教科書141ページから142ページ)

評価方法と基準

中間テスト(1)25%、中間テスト(2)35%、期末テスト40%。総合得点が60点以上を合格とする。ただし、出席率が60%以下の者は、期末テストの受験資格がないものとする。

教科書・参考書

教科書
 小出泰士『技術者倫理入門』(丸善 2010年)

参考文献
 黒田光太郎、戸田山和久、伊勢田哲治編『誇り高い技術者になろう』(名古屋大学出版会、2004年)
 齊藤了文、坂下浩司編『はじめての工学倫理』(昭和堂、2001年)
 ハリス、プリチャード、ラビンス著、日本技術士会訳編
『第2版 科学技術者の倫理 その考え方と事例』(丸善株式会社、2002年)

履修登録前の準備

特になし

学習・教育到達目標との対応(機械工学科)

1.(A-1)文化・芸術・歴史・国民性などに基づいた大局的な視野に立って,機械工学と社会の関わりやエネルギー・環境問題を考察することができる.
2.(A-2)技術の発達が自然・生命・社会にもたらしてきた問題を理解し,機械工学者として倫理的な視点を踏まえた行動をとることができる.

学習・教育到達目標との対応(機械機能工学科)

1.(C)技術・工学が地球環境と生態系との共生・共存を無視して独走することがないように,「技術・工学が社会に果たす役割」を強く自覚するための基礎知識と総合能力を習得する

学習・教育到達目標との対応(応用化学科)

1.(D)的確な判断のもとに技術者として責任のある行動をとる。

学習・教育到達目標との対応(電気工学科)

1.B.技術における倫理的責任の認識と実践のため、技術者の行動規範となる倫理要綱を理解し、説明できる。また、工学の実践の場において、技術者として倫理観に基づき価値判断ができる。

学習・教育到達目標との対応(土木工学科)

1.B:土木技術が社会と自然に対して大きな影響を与えることを理解し、技術者として、持続可能な社会を創造するための役割と責任を理解する

オフィスアワー、質問・相談の方法

授業のある日、授業の前後の時間。研究室あるいは講師室にて。

環境との関連

環境教育科目 (環境教育割合30%)

最終更新 : Tue Sep 15 10:45:31 JST 2015