02134201

基礎熱統計力学

Thermal and Statistical Mechanics

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授業の概要

物理学には様々な分野があるが、そのなかで本講義で取り上げる「熱統計力学」は工学一
般に広い応用を持っている。特に近年は、エネルギー問題、環境問題から材料物性や生物
・化学・社会科学まで応用の裾野を広げ、その重要性は増すばかりである。将来いかなる
分野に進もうとも、エンジニアとして熱統計力学の基本的な考え方は理解しておく必要が
ある。

産業革命から始まる熱機関やもっと身近な水の沸騰や冷却など我々が日常的に経験する「
熱現象」の一般論を扱うのが熱力学である。これは、熱現象を巨視的観点から説明しよう
とするアプローチをとる。一方、統計力学は熱現象を原子・分子の微視的観点から説明し
ようとする学問である。個々の要素は単純でも多数集まることによって多彩な現象を示す
事がある。その様な現象に対して統計力学は強力な解析手段を提供する。

講義の内容は、まず、温度や熱という我々が日常的に使っている熱の概念を正確に理解す
ることから始める。そして、熱力学の法則から様々な熱現象が理解できることを学ぶ。後
半の統計力学では、ミクロな原子分子の運動から出発して熱現象を理解する手法を学ぶ。

達成目標

1.熱力学の法則を理解し説明が出来る。
温度、エントロピー、自由エネルギーについて定義を説明することが出来る。
2.準静的過程の仕事の計算が出来る。
理想気体の比熱の計算が出来る。
3.カルノーサイクルについて説明し、必要な計算が出来る。
熱機関の効率などの計算が出来る。
4.古典統計力学の原理と手法について説明できる。
5.2準位原子系、理想気体、調和振動子に関する分配関数、自由エネルギーを求め、物理量の計算が出来る。

授業計画


【授業計画】【授業時間外課題(予習および復習を含む)】
1.温度と熱
 ・ 温度と熱の定義
 ・ 理想気体の気体分子運動論
理想気体の状態方程式
運動エネルギー、力積と運動量変化
エネルギー保存則
(教科書p.7-19)
2.熱力学第1法則(1)
 ・ 熱力学第1法則と内部エネルギー
 ・ 状態量
熱力学第1法則
(教科書p.27-32)
3.熱力学第1法則(2)
 ・ ゆっくり変化するときの仕事の計算
・定積比熱と定圧比熱の定義
仕事の計算, logの微分積分計算
全微分と偏微分
(教科書p.32-38)
4.熱力学第1法則(3)
 ・ 理想気体の比熱、マイヤーの関係式
 ・ 理想気体の断熱過程
理想気体
(教科書p.38-42)
5.熱力学第2法則(1)
 ・ カルノーサイクルとエントロピー
カルノーサイクル
(教科書p.46-50)
6.熱力学第2法則(2)
・ 可逆と不可逆
・ 内部エネルギーとエントロピーのフロー図
・ いろいろな熱機関の効率
熱機関と冷凍機
(教科書p.51-52)
7.熱力学第2法則(3)
 ・ エントロピー増大の法則と不可逆性
 ・ エントロピーの微視的意味
 ・ 熱力学第3法則
熱伝導時のエントロピー変化
自由膨張
エントロピーを微視的に見る
(教科書p.63-67)
8.熱力学関数
 ・ 自由エネルギーと熱力学的変化の方向
 ・ 熱力学的恒等式
 ・ 相と相平衡
ヘルムホルツの自由エネルギー
ギブスの自由エネルギー
化学ポテンシャル
(教科書p.74-76, 82-83)
9.古典統計力学
 ・ 小正準集団(ミクロカノニカル)による定式化
 ・ ボルツマンの等確率の原理
 ・ 正準集団への拡張
小正準集団
(教科書p.108-113)
10.正準集団の応用(1)
 ・ 2準位原子系
2準位原子系
(教科書p.141-143)
章末問題6.4
(教科書p.148-149)
11.正準集団の応用(2)
 ・ 量子理想気体
ガウスの積分公式
(教科書p.115-116)
12.正準集団の応用(3)
 ・ ギブスのパラドックス
・ 古典理想気体
ギブスのパラドックス
(教科書p.134-136)
13.正準集団の応用(4)
 ・ 古典調和振動子(固体比熱の古典模型)
章末問題6.3
(教科書p.148)
14.正準集団の応用(5)
 ・ 量子調和振動子(固体比熱のアインシュタイン模型)
・ 2重鎖DNAの解け
章末問題6.5
(教科書p.149)
15.熱統計力学のまとめと期末試験 1-14回までの講義内容のすべて

評価方法と基準

小テストやレポートなどの客観的評価による平常点(30%)
期末試験(70%)を合計100%として60%以上を合格とする。

教科書・参考書

教科書:
・「ゼロからの熱力学と統計力学」 和達三樹、十河清、出口哲生著 岩波書店

参考書:
・グライナー物理テキストシリーズ
「熱力学・統計力学」W.グライナー他著 シュプリンガー・フェアラーク東京

・「キッテル--熱物理学」第2版 キッテル著 丸善

履修登録前の準備

高校数学の微分積分の計算。特に合成関数の微分、積の微分、指数関数・対数関数の微分。
数列和の計算。
力学の運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの理解。
基底科目の物理学の認定を受けていることが望ましい。

学習・教育到達目標との対応(機械工学科)

1.(D-1)基本的な物理現象を自然科学の原理から数学的に導くことができ,機械の設計や性能評価に必要な技術計算ならびに統計処理を正確に行うことができる.

学習・教育到達目標との対応(機械機能工学科)

1.(E)機械工学における基盤分野の理解に必要な基礎的な数学の知識と応用能力,実験・分析の遂行に必要な確率・統計,情報処理の基礎的な知識や自然現象を数学的にモデル化し,シミュレーションする基礎的な知識と応用能力を習得する  (1) 基礎的な数学の知識  (2) 実験データの分析能力  (3) 情報リテラシの習得  (4) 自然現象をモデル化し,シミュレーションする能力

学習・教育到達目標との対応(応用化学科)

1.(A)確かな基礎と化学の専門知識に基づいて問題を解決する。

学習・教育到達目標との対応(電気工学科)

1.C1:自然科学全般の基礎的な考え方を理解し、技術の基盤となる自然科学の原理を説明できる。

学習・教育到達目標との対応(電子工学科)

1.(C)自然科学、数学、情報技術の知識を習得し、現象を論理的に考えて理解する能力を身につける。

学習・教育到達目標との対応(土木工学科)

1.C:数学および自然科学などに関する工学基礎知識を習得し、土木工学分野において応用・利活用できる能力を身につける

オフィスアワー、質問・相談の方法

授業終了後適宜

環境との関連

環境関連科目 (環境教育割合10%)

最終更新 : Thu Jun 09 07:15:45 JST 2016