C0871200

鉄鋼材料製造法

Steel Manufacturing Processes

開講部

工学部

開講学科

材料工学科

開講学年

3年次

開講時期

前期

単位数

2

単位区分

選択必修

系列区分

専門

講義区分

講義

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授業の概要

現代の鉄鋼技術がいかなるものであるか,それが世界的規模ではどのような方向に向かって進化し続けているかという基本的な理解を踏まえたうえで,鉄鋼技術によって生み出されている膨大な量の金属製品,“スチール”がどのようにして造られているのか,また,それがどのように使われているかを勉強する.

日本では技術用語としての鉄(アイアン)と鋼(スチール)の区分がいっぱんには必ずしも厳密ではなく,普通の人にはもっとも基本的な製鉄と製鋼と,どこがどう異なっているのか分かりにくいのではあるまいか.鋼を造る,すなわち製鋼の基本は鉄に混じっている酸素を取り除いてやることである.いっぽう製鉄と言えば狭義には鉄,すなわち,銑鉄(直接的には溶銑)を造る技術であって鉄鉱石中の酸素を取り除くのに石炭(コークス)を大量に使ってほとんどの場合高炉で造られている.高炉では,ごく大まかに言えば生産しようとする鋼の半分のコークスを消費して溶銑(鉄と炭素の混合融体)をつくるが,コークスのほとんどは熱とCO2になる.

鉄に関わる人々は,特に地球温暖化が深刻な人類の課題となってきているこの四半世紀になって高炉製鉄の抱えるCO2問題としんけんに取り組まざるをえなくなってきている.しかしながら,高炉をやめればよいと言った単純な議論では問題は解決しない.これまでのように高炉に大きく依存した製鉄・製鋼技術から将来も持続できる鉄鋼生産を続けてゆくためには高炉に代わる新しい技術に適合した後工程の技術開発も進めなければならない.言うまでもなく,それを考え実現してゆくには今日の鉄鋼技術を十分に理解していなければならない.

本講義では以上のような視点をもって現代の最先端の鉄鋼の製造技術を勉強し,今日いっぱんの人々にも馴染みのあるスチール製品がどのようにして製造されているのかを知り,いくつかの代表的なスチール製品なら製造現場の技術者と議論できるほどの知識を身につけることを目指している.もちろん,現場の技術者を養成することを目指しているのではなく,このような知識が多くの金属材料を実践的に理解するうえで極めて有力な手がかりとなることを確信するからである.

今日人類が消費している金属材料の96パーセント前後がスチールである.言い換えれば現代の産業の多くがスチールを加工して様々な工業製品や社会インフラを提供しているのである.このことを考えるならスチールに関する上記のような知識を持つことの重要性はあえて指摘するまでもなかろう.将来どのような分野に進むにせよ学生諸君の将来の可能性を拡げ,充実させることに役立つであろう.さらには,このような知識を身につけ発展させて行く若い世代が育ってゆくことは環境との調和のある次世代の鉄鋼技術の発展にも有力なリソースとなるであろう.

達成目標

1.今日の鉄鋼製造技術の主流である高炉転炉法に基ずく新鋭の大型製鉄所において原料(鉄鉱石)から製品がどのように造られているか,その製造技術の基本指針となっている考え方や理論を学ぶ.
2.代表的な鉄鋼製品である厚板,熱延コイル,冷延薄板,棒鋼・線材などの製造プロセスを取り上げ,各製品における重要な製品特性と,それを実現・達成するためのプロセス技術を主としてメタラジーの立場から学ぶ.
3.鉄鋼材料を主要な構造材料としている自動車,各種産業機械,船舶,橋梁,建築物や都市構造物,などにおいて鉄鋼材料に求められる特性とその評価方法・評価基準などを学び,今日の鋼材が到達しているレベルと,いまなお残されている課題が何か,その解決のためにどのような研究開発が行われているかを理解する.

授業計画


【授業計画】【授業時間外課題(予習および復習を含む)】
1.現代の製鉄技術
 ・高炉転炉法と(還元鉄)電炉法の一貫的なプロセスの概略
 ・それぞれの原料および製品群の概要
 ・環境への負荷とこれからの技術課題
インターネットで製鉄所のHPを閲覧し,製鉄所のイメージをつかんでおく.
2.粗鋼〜成品溶湯〜鋳造までの製造技術
 ・粗鋼の製造と成品溶湯までのプロセスと精錬技術
 ・鋳造法と鋳片の品質
事前配布資料「製鋼」編を通読
3.厚板プロセス(1)
 ・厚板プロセスの設備とメタラジー(CR,TMCP/DQ)
 ・合金設計と機械的性質(強度,靭性,溶接性)
事前配布資料「厚板のプロセスメタラジー」を通読
4.厚板プロセス(2)
 ・焼入性の概念と応用
 ・CCT線図と変態挙動・組織
 ・組織と強度・靭性
事前配布資料「焼入れ性とCCT」を通読
5.厚板製品と溶接性
 ・溶接HAZの組織と靭性
 ・溶接HAZの靭性と破壊力学
事前配布資料「溶接HAZと靱性」を通読
6.熱延プロセス(1)
 ・熱延プロセスの設備とメタラジー(熱延集合組織,残留γ)
 ・合金設計と機械的性質(強度,加工性)
事前配布資料「熱延プロセスとメタラジー」を通読
7.熱延プロセス(2)
 ・熱延ハイテンのメタラジーと製品特性
事前配布資料「熱延ハイテン」を通読
8.冷延プロセス(1)
 ・冷延プロセスの設備とメタラジー(再結晶と集合組織,その他)
 ・合金設計と機械的性質(強度,加工性,その他)
事前配布資料「冷延プロセスとメタラジー」を通読
9.冷延プロセス(2)
 ・冷延ハイテンのメタラジーと製品特性
 ・メッキ,コーティング技術と特性
 ・特殊な冷延製品(電磁鋼板,フェライト系SUS)
事前配布資料「冷延ハイテン」を通読
10.棒線プロセス(1)
 ・棒線用の製鋼法と鋳造法
 ・棒線の熱間圧延
 ・TTT線図 とパテンティング
事前配布資料「棒鋼・線材」を通読
11.棒線プロセス(2)
 ・棒線の冷間引抜き
 ・バネ材
 ・超高張力線材/極細超高張力線材
事前配布資料「線材の冷間成形と線材特性」を通読
12.ステンレス(1)
 ・ステンレスの製鋼
 ・耐食性とステンレス
 ・耐熱性とステンレス
 ・耐酸化性とステンレス
事前配布資料「ステンレス」を通読
13.ステンレス(2)
 ・オーステナイト系とフェライト・マルテンサイト系
 ・その他のステンレス
事前配布資料「ステンレスの分類と用途」を通読
14.鋳鍛品プロセス
 ・設備と製品の特徴
事前配布資料「鋳造・鍛造」を通読
15.14回の講義を通して習得した鉄鋼材料とその製造技術を総括し,その習熟度をテスト形式で把握する. 総括復習

評価方法と基準

1)レポート
2)中間テスト
3)期末テスト

評価の割合
1)20% 2)30% 3)50%

教科書・参考書

<参考書>

1)日本鉄鋼協会創立80周年記念 叢書「鉄鋼技術の流れ」     地人書店
   第1シリーズ 第2巻 取鍋精錬法      梶岡博幸著
          第4巻 制御圧延・制御冷却  小指軍夫著
          第6巻 形鋼圧延技術     中島浩衛著
          第8巻 フェライト系耐熱鋼  太田定雄著
   第2シリーズ 第4巻 薄鋼板製造技術    阿部光延著
          第5巻 鋼管の製造法     林千博著
          第6巻 ステンレス鋼     遅沢浩一郎著
          第7巻 機械構造用鋼     渡辺敏幸著
          第11巻 棒鋼・線材圧延    稲守宏夫著,市田豊著
2)日本鉄鋼協会編 新版鉄鋼技術講座 第1巻 製銑製鋼法    地人書店
     同        同     第2巻 鋼材製造法     同
     同        同     第5巻 鋼鋳物 鋳鉄鋳物    同
    同   鋼の熱処理                 丸善株式会社
3)(財)JFE21世紀財団 大学教材「鉄鋼工学 <プロセス編>」  (財)JFE21世紀財団
     同             同   <材料編>」      同

履修登録前の準備

なし

オフィスアワー、質問・相談の方法

毎週月曜の午後に在校しています.
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環境との関連

環境関連科目 (環境教育割合10%)

地域志向

地域志向ではない科目

最終更新 : Tue Sep 15 11:24:30 JST 2015