Japanese / English

A0710200

計算力学

Computational Mechanics

開講部

工学部

開講学科

機械工学科

開講学年

3年次

開講時期

後期

単位数

2

単位区分

選択

系列区分

専門

講義区分

講義

教育目標

D-2
准教授丹下学この先生のアンケート一覧を参照

授業の概要

【授業の概要と目的】 コンピュータの発達と数値計算技術の向上は、工学や自然科学の諸分野において数値予測(あるいは数値実験)と呼ばれる研究分野を生み出した。工学の広範な領域を対象とする機械工学も例外ではなく、数値計算に関する基本的素養を身に付けておくことは必須と言えよう。そこで本講義では、熱流体力学に関する具体的な問題を通して、最も基本的な数値計算手法である「差分法」を学習する。
なお,上述のような性格上、数値計算で対象とする個々の事例は、流体力学に関する初歩的な問題であり、本科目が流体系基礎科目としても位置づけられることを注意しておこう。
ところで、差分法自体は比較的理解しやすい考え方である。しかし、差分法を流れの問題に適用する場合には、安定性や収束性といった問題にまで気を配ることが必要で、この作業を怠ると流れ場を誤認する危険性がある。そのような数値計算特有の問題を理解しもらうため、本授業ではMatlabによる計算実習を実施する。実際の計算例を通じてその重要性や有用性を認識するとともに、流体力学の基礎方程式が持つ物理的イメージを明確にしてもらいたい。

授業の目的

熱流体力学に関する具体的な問題を通して、最も基本的な数値計算手法である「差分法」を身につけることを目的とする.

達成目標

1.流体運動を記述する基礎方程式について、その「物理的意味」と「数学的特徴」を説明することができる。
2.差分法の考え方を理解し、簡単な微分方程式について差分式を導出することができる。
3.近似精度、安定性、収束性に着目して差分法を評価することができる。
4.差分法を用いた初歩的な数値計算のプログラミングができる。さらに、プログラミングとそれに付随する知識について、インターネットを通じて有益な情報を取得することができる。

授業で使用する言語

日本語

授業計画


【授業計画】【授業時間外課題(予習および復習を含む)】
1.計算力学の研究対象
 ・工学における計算力学の位置づけ
 ・CFDの手法の概略
 ・講義で用いる数学的手法の復習(偏微分,Taylor展開)
 ・計算機環境に関するガイダンス
流れ学で学習したオイラーの運動方程式と連続の式を復習しておく
計算機システムに
ログインできることを確認しておく
2.流れの基礎方程式とその性質
流れの運動状態を記述する基礎式は,注目する物理量の保存則に基づいて導出される.その導出プロセスを復習した後,導き出された偏微分方程式の特徴について,物理的な意味と数学的な形式の両面から考察し,理解を深める.その上で,基礎式の本質を損なわない範囲において方程式の簡略化を図り,本講義で扱う方程式を整備する.
 ・流れの基礎方程式の導出(保存則の定式化)
 ・基礎方程式の簡略化
資料第1章の1.1,1.2を読む.基礎式の導出を行い,不明な箇所や用語を調べておく.
3.導関数の差分近似
微分係数や導関数の概念を高等学校で学習した定義に戻って確認することで,導関数(連続関数)が差分式(離散関数)へ近似されるイメージを明確にする.もちろん,差分式が導関数の近似式である以上,近似の程度について数学的な裏付けが必要である.その方法として,テーラー展開による差分近似式の導出方法を学ぶ.
 ・連続関数の離散化
 ・Taylor級数展開による有限差分方程式の導出と打ち切り誤差
資料第2章の2.1〜2.3
特に,多変数関数のテイラー展開について確認しておく
4.双曲型偏微分方程式の差分解法(1)
流れの基礎式の特徴の一つは,非線型性を持つ移流項にあるが,これを正面から取り扱うことは容易でない.ここでは,方程式に含まれる非線型項を線型化することで,複雑な流れの問題を一定速度で移流する流れの問題(移流方程式)に帰着させ,その方程式の差分解法について考える.単純化されたとはいえ,移流という流れの本質的な運動が考察の対象であることに変りはなく,それゆえに派生する数値計算上の問題もある.以降,数回にわたり「移流方程式」の差分解法を通じて,関連する様々な問題とその対処法についてトータルに考えていく.
 ・前進差分,後退差分,中心差分,片側差分
 ・移流方程式の数学的・物理的解釈
資料第2章の2.4,2.5,第3章の3.1を読む.式の変形は必ず自分で確認する.
第1章p.5の[参考]に目を通し,流れの基礎式の形式的な共通性が何か考えておく.
5.双曲型偏微分方程式の差分解法(2)
移流方程式の差分解法の導出方法を,代表的なスキームを通じて学習する.導出過程は,第3回『導関数の差分近似』で学んだものと同一であり,近似精度に関しても同じプロセスを通じて議論することができる.ただし,方程式自体が差分近似されるため,各項との関連について注意を払う必要がある.
 ・1次元移流方程式に対する差分スキーム(導出と精度)
 ・差分スキームの具体例(風上差分法)
資料第3章の3.2,3.3を読む.式の変形は必ず自分で確認する.その際,第3回の授業内容を参考にすること.
6.双曲型偏微分方程式の差分解法(3)
前回導出した移流方程式の差分解法を比較し,計算結果の特徴とその成因について考える.いろいろな側面から差分近似式を検討することがいかに有用であるか,具体例を通じて学びとってもらいたい,
 ・差分スキームの具体例(FTCS法)
 ・風上差分法の精度評価と差分解の特徴
資料第3章の3.4,3.5を読む.式の変形は必ず自分で確認する.精度評価の導出は前回の授業内容を参考にすること.
7.双曲型偏微分方程式の差分解法(4)
前回までに紹介した移流方程式の差分スキームを例にして,より精度の高い差分スキームの構築を試みる.また,特性線の概念を用いて,移流方程式に関する差分スキームの特性を整理する.
 ・FTCS法の精度評価と高精度化(Lax-Wendroff法)

誤差解析(1)
差分式を用いて数値計算を実行すると,計算結果は様々な挙動を示す.その振る舞いを理論的に調べる方法が「安定性解析」と呼ばれるもので,数値計算の誤差がどのように発展していくか(または収束していくか)を,フーリエ級数を用いて議論する.今回から3回にわたり,その具体的な方法を学んでいく.
 ・フーリエ級数の基礎
資料第3章の3.5,第4章の4.1を読む.フーリエ級数の定義は必ず自分で確認する.
8.誤差解析(2)
前回に引き続き,安定性解析の手法をさらに詳しく検討し,具体的な差分近似式に対して,安定性解析から得られる「振幅誤差」の振る舞いを評価する.
 ・複素フーリエ級数を用いた安定性解析
 ・von Neumannの安定性解析(FTCS法の場合)
資料第4章の4.1,4.2,4.3を読む.高校で学習した複素数についてその極形式を中心に調べておく.
9.誤差解析(3)
前回に引き続き,安定性解析の手法をさらに詳しく検討し,具体的な差分近似式に対して,安定性解析から得られる「位相誤差」の振る舞いを評価する.
 ・von Neumannの安定性解析(風上差分法の場合)
 ・振幅誤差と位相誤差
資料第4章の4.3,4.4を読む.前回の授業を参考にして安定性解析を行っておく.
10.放物型偏微分方程式の差分解法(1)
今回から,放物型偏微分方程式の差分解法として,熱伝導方程式の差分計算を具体的に考察する.“拡散”方程式の特徴に精通することが,理解を深める早道である.
 ・1次元非定常熱伝導方程式の厳密解
 ・放物型偏微分方程式の特徴
資料第5章の5.1,5.2を読む.厳密解の導出は必ず自分で確認する.
11.放物型偏微分方程式の差分解法(2)
放物型方程式の差分法に対しても,安定性解析は有効な情報を提供してくれる.もっとも簡単な陽解法に対して安定性解析を行い,妥当な数値解が得られる条件について考える.
 ・放物型問題の陽解法
 ・安定性
資料第5章の5.2を読む.式の変形は必ず自分で確認する.
12.放物型偏微分方程式の差分解法(3)
差分式の解法には,陽解法と陰解法の2種類が存在する.これまでは陽解法のみを取り上げてきたが,最後に陰解法の考え方について,放物型問題を例にとって紹介する.陰解法の要点は連立方程式の効率的な解法にあるが,ここではごく簡単なケースを設定し,その本質を見ていくことにする.
 ・放物型問題の陰解法
 ・Crank-Nicolsonのスキーム
資料第5章の5.3,5.4を読む.簡単な行列計算が必要なので,不明な部分は線形代数のテキストで調べておく.
13.差分法のプログラミング演習(1)
 ・1次元移流方程式の初期値問題に関する差分解法
 ・使用言語の選択とアルゴリズムの検討
 ・フローチャートの作成とプログラミング
第5回,第6回の講義内容を復習し,移流方程式の代表的な差分解法を確認する.
14.差分法のプログラミング演習(2)
 ・1次元移流方程式の初期値問題に関する差分解法
 ・前回のプログラミングの継続
 ・計算結果に対する考察
プログラミングを進める.
15.期末試験
試験終了後に配付解答を用いて解説.
前回までの授業内容を復習する.

評価方法と基準

【成績評価の条件】 下記(1)(2)の条件を満たす履修者に対してのみ成績評価を行う。
(1)全講義の2/3以上出席すること。
(2)目標達成度のチェックシートに、講義内容に関する理解度・達成度を毎週記入し、最後に提出すること。
【評価方法】授業内容の復習に関するレポート20%・プログラミング演習30%・期末試験50%として評価する。
【参考】2011年度成績平均点 71.5点(期末試験受験者対象)

教科書・参考書

講義で使用する資料は機械工学科のWebサイト(http://www.mech.shibaura-it.ac.jp/)に掲載するので,受講前に各自でダウンロードし、必ず予習をしておくこと。原則として教室での資料配付は行わない。

履修登録前の準備

本講義を理解するためには、テーラー展開、微分方程式、複素数の極形式、フーリエ級数に関する基礎知識が必要である。いずれも2年次までに学習する項目なのでよく復習しておくこと。また本科目ではプログラミングを行うので、同時期に開講されている「プログラミング言語」を履修しておくこと。

学習・教育到達目標との対応

1.(D-2)機械の運動機構や動特性,構造や強度,物質・運動量・エネルギーの流れなど,機械工学の基盤技術に関わる物理現象を自然科学の法則に基づいて理解し,現象の予測や解析を行うことがきる.

オフィスアワー、質問・相談の方法

豊洲キャンパス:授業日昼休み
担当者と直接連絡をとることが難しいときは、メールでの質問も受け付けています。

環境との関連

環境に関連しない科目

地域志向

地域志向ではない科目

社会的・職業的自立力の育成

対課題基礎力を育成する科目

アクティブ・ラーニング科目

能動的な学修への参加による授業が大部分

授業の到達目標と各学科の学習・到達目標との対応


最終更新 : Thu Jun 09 09:14:34 JST 2016